ここ数年、コンビニのおにぎりの形態が大きく変わりつつあります。特に「巨大化」したおにぎりが市場をにぎわせており、弁当のような複数の具材を詰め込んだタイプや、地域限定の変わりダネ商品が次々と登場しています。その背景には、消費者のコスパ意識やタイパ志向があるとされています。この記事では、大手コンビニ各社が繰り広げる「巨大おにぎり」のトレンドと、その背後にある戦略について探っていきます。

ファミリーマートの「SPAMむすび」が全国展開に至るまで

ファミリーマートは、特殊な具材を使った大きなおにぎりで知られており、その中でも「SPAMむすび」は大ヒット商品となっています。沖縄の宮古島からスタートし、全国へと展開されたこのおにぎりの成功秘話をご紹介します。

  • 2000年に宮古島限定で「ポーク玉子おむすび」として発売された
  • 2021年8月に首都圏の一部で「SPAMむすび」を再発売
  • 現在は全国展開され、女性にも人気が高い商品
  • 2023年には「大きなおむすび」シリーズも追加
  • 消費者のコスパ意識が強まり、付加価値の高い商品が求められる

ファミリーマートの「SPAMむすび」は、その成功の裏に細かな市場調査と消費者の声を反映した戦略があります。まず、2000年に宮古島限定で発売された「ポーク玉子おむすび」がその原点で、沖縄のローカルフードとして親しまれていました。そして2021年、首都圏の一部で「SPAMむすび」が再発売されると、その人気は予想を上回るものであり、全国展開に至りました。

「SPAMむすび」の特徴は、1937年に発売された米国ホーメルフーズ社の「SPAM」を使用している点です。1枚丸ごと入ったSPAMと、通常の約1.2倍のご飯と具材の量がボリューム満点です。これにより、女性にも親しまれる商品となり、南国リゾートを思わせるイメージが強調されています。

2023年には「大きなおむすび」シリーズを新たに追加。このシリーズでは、ご飯と具材の量が約180グラムと通常の約1.5倍で、ツナや昆布など、複数の具材を楽しめる設計です。さらに「サンドおむすび」や「具だくさん!おむすび」といったバリエーション豊かな商品ラインナップも揃えています。

ファミリーマートがこうしたラインアップを強化する背景には、消費者におけるコスト意識の高まりが影響しています。特に最近の物価高の影響で、手ごろな価格で食べ応えのある商品の需要が高まっています。「大きなおにぎり」の販売構成比はおにぎり全体の約1割程度ですが、その需要は年々伸長しています。こうした流れを受け、ファミリーマートは消費者に対して魅力的な付加価値を提供することに注力しています。

ローソンの「具!おにぎり」シリーズが話題

ローソンもまた、タイパ志向の消費者をターゲットにして「具!おにぎり」シリーズを展開しています。のり弁風のおにぎりから豪華な鶏めし風おにぎりまで、その多様なラインナップと消費者の反応をご紹介します。

  • 「具!おにぎり まるで明太のり弁」などSNSで話題商品が充実
  • 「具!おにぎり まるで鶏めし重」も6月に発売
  • 沖縄風の「具!おにぎり ポーク玉子 シーチキンマヨネーズ」も好評
  • タイパを意識したパスタサラダやスティック状のケーキなど
  • コスパ企画の「盛りすぎチャレンジ」も実施

ローソンでは、効率的に食事を楽しみたいというタイパ志向を持つ消費者向けに、「具!おにぎり」シリーズを強化しています。このシリーズは、単に大きいだけでなく、のり弁や鶏めしのような多様な具材を一度に楽しめる点が特徴です。たとえば、2022年4月に発売された「具!おにぎり まるで明太のり弁」は、SNSで話題となり、多くの消費者の関心を引きました。このおにぎりは、のり弁のおかずをそのまま詰め込んだ一品で、白身フライ、タルタルソース、玉子焼き、ちくわの磯辺揚げ、明太子が入っています。

さらに、「具!おにぎり まるで鶏めし重」は、6月に発売されました。このおにぎりは、だし醤油味のごはんに鶏つくね、ローストチキン、玉子焼き、チキンステーキといった鶏づくしの具材を詰め込んでおり、豪華な一品です。また、沖縄風のおにぎりとして「具!おにぎり ポーク玉子 シーチキンマヨネーズ」も好評で、こちらはポークランチョン、玉子焼き、シーチキンマヨネーズを使ったボリューム満点の一品です。

ローソンはおにぎりに限らず、タイパを意識した商品ラインナップを強化しています。振るだけでドレッシングと具材が混じるパスタサラダや、手軽に食べられるスティック状のケーキ、30種類以上の栄養素が入ったベーカリー商品などが提供されています。また、「盛りすぎチャレンジ」というコスパ企画も6月に実施され、値段を据え置きにしつつ内容量を47%増量するという試みが行われました。この企画では、「和風シーチキンマヨネーズ」や「チャーシューマヨネーズ」などのおにぎりが対象となり、多くの消費者に支持されました。

ローソンの一連の取り組みは、単におにぎりを大きくするだけでなく、消費者の多様なニーズに応えることが目指されています。これにより、多様なライフスタイルを持つ消費者に向けて、さまざまなシチュエーションで楽しめる商品を提供しています。今後も、競合他社とは異なる商品開発のアプローチを続けることで、ますます新しい商品が登場してくることでしょう。

セブン-イレブンが狙う「新しい形態のおむすび」

セブン-イレブンでも「大きなおにぎり」の需要に応えるため、多様な商品開発をしています。特に具材に重点を置いた「弁当おむすび」シリーズが注目されています。そのテスト販売の成果と、今後の展開について詳しく解説します。

  • 「弁当おむすび」シリーズがテスト販売中
  • 幕の内風やチキン南蛮&豚生姜焼肉など豪華な具材
  • オーソドックスな「大きなおむすび 和風ツナマヨネーズ」も好評
  • 地域限定の「山賊むすび」なども販売
  • 消費者の潜在ニーズに応えるための設備投資も継続

セブン-イレブンは「大きなおむすび」に対する需要に対応すべく、「弁当おむすび」という新しい形態の商品を開発しています。このシリーズは、単にご飯の量を増やすだけでなく、豊富な具材を詰め込んだ贅沢な一品が特徴です。特に、幕の内弁当をイメージした「弁当おむすび 幕の内」や、チキン南蛮と豚生姜焼肉を組み合わせた「弁当おむすび チキン南蛮&豚生姜焼肉」が現在テスト販売中であり、非常に好評です。

「弁当おむすび 幕の内」は、つくね、焼き鯖、出汁巻き玉子、きんぴらごぼう、梅干しといった幕の内弁当の定番具材を詰め込んでいます。一つのおにぎりでこれだけの具材を楽しめる点が、多くの消費者に評価されています。また、「弁当おむすび チキン南蛮&豚生姜焼肉」は、唐揚げを甘酢で味付けしたチキン南蛮と豚生姜焼、タルタルソースに焼きそばと、ボリューム満点で何度も楽しめる内容です。さらに、4月には「弁当おむすび のり弁」も販売され、白身フライ、明太子、磯辺揚げ、タルタルソースが具材として使われました。

その他にもセブン-イレブンでは、オーソドックスなおにぎりとして「大きなおむすび 和風ツナマヨネーズ」も提供されています。これはもっと広い地域で販売されており、テスト販売の商品とは違って安定した人気を誇っています。また、特定の地域でのみ販売される「山賊むすび」などの限定商品も展開されています。この「山賊むすび」は、山口・広島・島根の3県で販売されており、地域の特産品を活かした具材が使われています。

セブン-イレブンの「大きなおむすび」は、消費者の潜在ニーズに応えるために継続的な設備投資が行われており、具材の特化と新しい形態の開発が進められています。消費者のニーズが多様化する中で、セブン-イレブンはその多様な要求に応えるための柔軟なアプローチを取り続けています。

ニューデイズの「スゴおに」シリーズが斬新すぎる!

ニューデイズは、大きなおにぎりとして「スゴおに」シリーズを展開し、斬新なアイデア商品の数々で注目を集めています。SNSやメディアで話題の商品と、その背景にある戦略をご紹介します。

  • 「スゴおに」シリーズは既に70種類以上
  • 特に斬新なアイデア商品が多い
  • テレビやSNSで反響が大きい
  • ご当地フェアに合わせた商品開発も積極的
  • 2024年には新しい「げんこつおにぎり」も登場予定

ニューデイズは、「スゴおに」シリーズを中心に、大きなおにぎり市場で大きな存在感を示しています。このシリーズは、既に70種類以上の商品の開発が行われており、その斬新なアイデアが多くの消費者に支持されています。特に、SNSやメディアで紹介されることが多く、それが新しい購入層の獲得にもつながっています。

例えば、「のり弁にぎりました」という商品は、のり弁当をそのままおにぎりに詰め込んだ一品で、煮ホタテを3つ使用した「ホタテトリプル(ホタテ煮おにぎり)」や、つけ麺をおにぎり化した「とんこつ醤油つけ麺風おにぎり」など、非常にユニークで楽しさに溢れた商品がラインナップに加わっています。他にも、たこ焼きやベーコンエッグを詰め込んだアバンギャルドなおにぎりが人気です。

さらに、四角い手軽なミニ弁当風の「箱おに」シリーズも展開しており、天丼風やチキンカツ&タルタルソースといった具材を詰め込んだ商品がこれまでに販売されてきました。2024年からは、新しい「げんこつおにぎり」シリーズが登場する予定で、ツナマヨと昆布や、豚の生姜焼きと野沢菜といった複数の具材を組み合わせた商品がラインナップに加わる予定です。

ニューデイズの「スゴおに」シリーズの成功の背景には、消費者のコスパ意識に応えるための商品開発が挙げられます。特にコロナ禍以降、原材料価格の高騰もあり、消費者は少しでも高い満足感を得られる商品を求めています。このニーズに合わせて、ニューデイズは大胆で斬新な商品を次々に投入し、消費者の心をつかんでいます。

また、ご当地フェアに合わせた商品開発も積極的に行われており、各地の名産品を生かした独自の商品がラインナップされています。これにより、ニューデイズに新しく興味を持つ消費者が増えるだけでなく、地域の特産品の普及にも一役買っています。

まとめ

コンビニ各社が繰り広げる「巨大おにぎり」のトレンドは、消費者のコスパやタイパ志向に応える形で進化し続けています。ファミリーマート、ローソン、セブン-イレブン、ニューデイズそれぞれが独自のアプローチで市場を拡大し、ユニークで付加価値の高い商品を提供しています。各社の取り組みは今後も続くと予想され、ますます多様で魅力的な商品が登場することでしょう。

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